WEB ちばサイくん
メールマガジン「ちばサイくん」第2号
/2001年9月14日

ちばサイエンスの会

 

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            2●サイの目●

         会員による自由投稿のコーナー
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■ 「気象関係者にもアッと言わせる映画『ココニイルコト』」
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(文責・田中博春/「ちばサイ」編集担当)

 みなさんこんにちは、田中博春です。

 「ちばサイくん」第0号に高田さんが書いていた「千と千尋の神隠し」の記事に触発されて、私も映画の話を書いてみたくなりました。私が見たのは、日本ヘラルド映画の「ココニイルコト」。

 月刊『星ナビ』2001年8月号の「news file」に紹介されていたこともあり、銀座にある「シネスイッチ銀座2」で見てきました。この映画は電波少年やニュースステーションで注目を浴びた真中瞳さんの初主演の映画なのですが、その相手役の堺雅人さんが天文ファンという設定。映画の中でもよく星座早見盤を手にしているなど、随所に天文ファンなら楽しめるシーンが出てきます。

 特に、彼が足繁く通う「明石市立天文科学館」は何度も出てきて、有名な子午線塔や日本で現役最古となったカール・ツァイスの投影機もバッチリ写っています。星ナビによれば、映画の設定に合わせた2000年10月23日の星空の解説をするなど、映画ではディテールにこだわっているようです。プラネタリウムを見に来たお客さんの数も、1回の投影で15〜16人といったところ。最近のプラネタリウムのお客さんの入りはそう多くはないとは思いますが、なにもガラガラの館内まで現実と同じにしなくてもいいのになー、と思うのでありました。

 さらに、この映画は天文のみならず、気象に詳しい人なら誰でもアッと気づく仕掛けがあるのです。

 玩具メーカーから宣伝のプロモーションを依頼された、真中さん演ずる相葉志乃は、子供のころの楽しかった思い出の写真をヒントに広告を作ります。その思い出の写真は、大きな白い風船を握った親子が広い芝生の上でニッコリしている写真なのですが、その風船はタダの風船ではナイのです。それはなんと、現業の高層気象観測で使われている高層気象観測用の気球。おそらく1981年から使われはじめたRS2-80型レーウィンゾンデ用のものだと思われます。10年以上前の家庭用ビデオカメラで撮影されたと思われるその思い出のシーンには、露場の上に設置された百葉箱や雨量計なども写っていて、気象関係者を泣かせます。きっと映画関係者のごく親しい知り合いの中に、高層気象観測に関わる方がいらしたのでしょう。いや、ビックリです。

 「ツイスター」などの気象現象そのものを扱った映画ならともかく、ごく普通の恋愛もの(?)の映画の中に、高層気象官署の露場がさりげなく出てくるなんて・・・。気象観測の現場に携わるワタシとしては感慨深いものがあったのでした。

ということで、ではまた来週。☆

 

<参考>

・ココニイルコト オフィシャルサイト
http://www.kokoniirukoto.com/

・日本ヘラルド映画株式会社
http://www.herald.co.jp/

・明石市立天文科学館
http://www.am12.akashi.hyogo.jp/

 

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 ここは「ちばサイ」向きと思われるサイエンスっぽいネタを、会員が問題提起エッセイとして自由投稿するコーナーです。「今日はこんな発見をした」「こんな工夫をした」「こんな本を読んだ」「こんな人にあった」などなど。自己体験と、そこから生じたふとした問題意識をベースに、投稿者の目線で語っていただくものです。「サイ新ニュース」より、間口が広いので、気楽にどしどしご投稿ください。

 

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            5●トリケラトプス●

             特集記事のコーナー
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■ 「詳密気象観測網「そらまめ君」が地上観測で捉えた台風15号の渦巻き」
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(文責・田中博春/「ちばサイ」編集担当)

 みなさんこんにちは、田中博春です。

 今週の気象関係の話題といえば、なんといっても台風15号。まさに東京直撃でしたね。ちばサイ会員のみなさん中にも、ずぶ濡れになりながら家を出た方がいらっしゃるのではないでしょうか?

 今回の台風は東京直撃コースということもあって、関東地方を中心に展開されている密な気象観測網の真上を通りました。そこで、今回はそれで詳細に捉えられた台風の観測結果をみてみましょう。

 台風といえば、「ぐるぐる渦を巻いているもの」。ひまわりによる雲画像ではおなじみですが、その渦巻きのようすが、今回地上観測でも鮮明に捉えられました。

・環境省大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」
http://w-soramame.nies.go.jp/

 この観測網はもともと大気汚染監視用に設置された「大気汚染常時監視測定局」のネットワークです。この観測網には、「空をマメに監視している」ので「そらまめ君」・・・、などという、しょうもない愛称がついていますが^^、その名前とは裏腹に、このページかなり使えます。実際、各都道府県の環境局などが管轄し、環境省がまとめている観測点ですのでご安心のほどを。

 たとえば、東京都にあるアメダスは、気温・雨・風・日照時間を測れるアメダス(4要素観測点)が7地点、雨量のみを観測している地点(1要素観測点)を加えても10地点しかありません(いずれも島嶼を除く)。ところが、大気汚染局は全部で76地点あるのですね。こういえば、この観測網がいかに詳密かということをわかっていただけるのではないかと思います。

 それでは、その観測結果を見てみましょう。先程のページを開き、以下のように操作してみてください。

  1. 画面左上の日本地図から「関東地方」をクリック。
  2. 画面左側にある「1時間値データ」から「風向・風速」をクリック。
  3. こんどは画面右上の「日時」から台風が東京都通過した「2001年9月11日10時」を選択し、「設定」をクリック。
  4. 画面右の中央付近にある「拡大・縮小」から、「拡大」を選び拡大していきましょう。

 すると、この時間、ちょうど羽田空港あたりを中心として、風が渦を巻いているようすが見えてきませんか? これこそが今回の東京を直撃し、通勤・通学途中の皆さんをずぶ濡れにした台風の渦なのです。これほど見事に台風の渦を地上観測にて捉えられたのもめずらしいのではないかと思います。また、これだけの観測点の情報を、自宅にいながらほぼリアルタイムで見ることが出来るようになったということ、よく考えるとすごいことですよね。

 東京都環境局のページでも、台風15号の渦が東京を通過してゆくようすを見ることができます。こちらは東京都の範囲内のみだけということもあり、9月11日の11時くらいがいちばん渦らしく見えるでしょうか? このように6時間分の風の分布を並べてみると、台風が来る前と来た後では、風向きがまるっきり反対になるようすもよくわかります。

・東京都環境局
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/
> 大気汚染地図情報(速報値)2001年9月7日5時〜2001年9月14日5時(JST)
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/cgi-bin/tokyokh/bunpu1/p101.cgi?wv==1000183371==map6=====1=

 下はこのときのひまわりによる雲画像です。宇宙から見えたこの渦が、地上でも捉えられたのですね。

・高知大学気象情報頁
http://weather.is.kochi-u.ac.jp/
> 研究と教育のための保存書庫 - 日本の可視画像 - 2001年9月11日10時
http://weather.is.kochi-u.ac.jp/sat/japan.vis/2001/09/11/jp.01091110.jpg

 またこのときのレーダー雨量の分布は以下のとおり。「9月11日10時00分」のデータをプルダウンメニューから選べば、このときのレーダー雨量を見ることができます。

・東京電力 雨量・雷観測情報
http://www.thunder.ttcn.ne.jp/

 9月に入りいよいよ本格的な台風シーズンとなってきました。台風というと、つい進路予想だけに目が行ってしまいますが、レーダー雨量を見ればわかるように雨域はバンド状で、必ずしも中心にゆくほど雨が多いというわけではありません。レーダー雨量やレーダーアメダスの情報をチェックすれば、今から雨がどのように降るかを見て、その後の行動を決めることをぜひおすすめしたいと思います。

 以上です。それではまた来週。

p.s. 上にあげた気象情報は、インターネット上には1週間分程度しか蓄えられていません。それを過ぎると見られなくなってしまうことので、お早めにご覧ください。☆

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■ 台風関連リンク集

 今回は台風15号に関連して、台風関係のサイトを集めてみました。今は台風シーズンということで、これからも日本に近づく台風があるかと思います。そのときのご参考にしてください。

● 進路予想など

・毎日放送
http://mbs.co.jp/
> 台風情報
http://www.mbs.co.jp/weather2/taifu.html
雲画像の上に台風の進路予想図が重ねられていてとてもビジュアル。サイズも大きくわかりやすい。

・国際気象海洋株式会社
http://www.imoc.co.jp/index.htm
> 台風予想進路図(気象庁発表)
http://www.imoc.co.jp/typ.htm
過去の進路予想をつなげた動画が見られる。

・気象庁
http://www.kishou.go.jp/
> 平成13年9月11日16時30分発表 台風第15号の動向について[PDF形式:654KB]
http://www.kishou.go.jp/press/0109/10a/T15no1.pdf
この前の台風15号に関して気象庁が発表した情報。PDF形式なので、Adobe Acrobat Reader がセットアップされている必要がある。

● レーダー雨量

・東京電力 雨量・雷観測情報
http://www.thunder.ttcn.ne.jp/
> 千葉県の雨量情報
http://www.thunder.ttcn.ne.jp/cgi-bin/main.cgi?area=4&zoom=4&type=1
東京電力がおもに雷対策として独自に設置したレーダーによるレーダー雨量情報。雨量は6分間隔、雷に至っては3分間隔で現況を知ることができる。関東地方全域・千葉県・千葉県を3分割した地域と、分布範囲を切り替えることもできる。

・国土環境株式会社
http://www.metocean.co.jp/
> 旧 気象のページ
http://www.metocean.co.jp/kisho/html97/kisho/index.html
レーダアメダス降水分布 − 関東合成レーダ(10分毎更新)
こちらは気象庁のレーダーによるレーダーアメダスによる雨量分布。関東合成レーダーは過去1時間分のアニメーションを見ることができ、雨域の移動を把握するのによい。

・TBS weather guide
http://www.tbs.co.jp/weather/
> 合成レーダー
http://www.tbs.co.jp/weather/r_c-j.html
こちらも関東を中心とした合成レーダーによるレーダー雨量のアニメーション。アニメーション速度を変えたり、コマ送りができるのがすばらしい。画像が小さめなのが少し残念。

・国際気象海洋 − 気象情報のコーナー
http://www.imoc.co.jp/
> レーダーアメダス合成値(気象庁発表)
http://www.imoc.co.jp/rdam/rd0_jp.htm
> 中日本 過去24時間降水量変化
http://www.imoc.co.jp/rdam/rd4_mjp.htm
こちらもレーダーアメダスによる雨量分布とそのアニメーション

● 雲画像

・サンコーシャ
http://www.sankosha.co.jp/
> 気象情報
http://www.kisho.sankosha.co.jp/index.html
> 日本付近赤外画像
http://www.kisho.sankosha.co.jp/WeatherPage/gms/jp2/jp2_frame.html
「日本付近赤外画像」のページからは、東日本のみを強拡大した雲画像を見ることができる。

・高知大学気象情報頁
http://weather.is.kochi-u.ac.jp/
> 気象衛星ひまわりによる日本の可視画像
http://weather.is.kochi-u.ac.jp/JV/00Latest.gif
日本付近のみを切り出した可視画像。リアルタイムで公表されている可視画像の中ではもっとも解像度が高いと思われ、その分詳細な雲の分布を捉えることができる。

● 風向風速分布

・環境省大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」
http://w-soramame.nies.go.jp/
各都道府県に配置された大気汚染監視のための詳密気象観測網。空をマメに監視しているということで、「そらまめ君」という愛称を持つ。アメダスをはるかにしのぐ風向風速の詳密な分布を捉えることができる。

・東京都環境局
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/
> 大気汚染地図情報(速報値)
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/cgi-bin/tokyokh/bunpu1/p101.cgi
東京都の大気汚染監視局の76地点のデータを用いて描いた都内の大気汚染情報。ここの観測点の情報をもとに、グリッド化された分布を見ることができる。「風速」→「時系列」を選択すると都内の風向風速の移り変わりを、6時間分一度に見ることも可能。

● 台風の知識

・ウェザーマップ
http://www.weathermap.co.jp/menu.html
> おさるの台風メモ
http://www.weathermap.co.jp/gaikyo/typhoon_memo.html
お天気キャスター「おさる」による台風のまじめな解説。

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 特集的な位置付けのコーナーです。読みきりの本格的ウンチク系の記事のほかに、何か科学的に大きな現象の観測・観望情報とか、あるいは会の行事の報告とか、比較的ボリュームのある内容の記事を載せていこうと思います。

 

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