WEB ちばサイくん
メールマガジン「ちばサイくん」第17号
/2002年1月22日

ちばサイエンスの会

 

●INDEX●

 

■2【サイの目/自由投稿

■5【トリケラトプス/特集

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2●サイの目●

会員による自由投稿のコーナー

 
■ 「ハシモトのインチキ科学コーナー その11」
 

(文責・橋本悦夫/船橋市総合教育センタープラネタリウム館)

 

 今、プラネタリウム館の学習投映は6年生の投映がピ−クをむかえています。指導内容の移行に伴い、6年生も「オリオン座の動き」など南天のみを扱うことになっていて、北天の星の動きはやらなくても良い、ということです。

 しかし、私たちは「北極星を中心にどのように動いているのかを知ることは大事ですからね」と北天の投映を勧めています。

 北天の投映では、子午線(真南−天頂−真北を結ぶ架空の線)を映し、北極星に固定の矢印を映して時間を進めます。つまり日周運動です。

 3時間も動かせば北極星が小さな円を描いて動いているのが分かるのですが、「北極星は動いたか?」の問いに「動いた」、「動かない」の声が半数ずつ返ってきます。

 具体的な根拠は把握していませんが、過去の経験から判断して、既収得事項として「北極星は時間がたっても動かない」と理解している(させられている)子が相当いる様子。

 ここで、無理に「北極星は動くんだ」と言っちゃうと教育熱心な保護者や塾の先生からのクレームが怖いので、その中間をとります。

 「今は、矢印や線を映しているから北極星が少し動くのが分かるけど、実際の空では殆ど分からないんだよ」でごまかし。

 次は「まる24時間たったらどうなるか」と聞くと子供からは「元の所に戻る」とか「ぴったんこ同じ所だ」などと言う声。

 そこで、初めにカシオペヤ座のW型の線をスライドで映しながら日周運動を観察するので、その線を映しておいて、「24時間0分0秒で止めるよ」と言いつつほんの少し日周が行き過ぎた所で止めるのです。

 「どうだ、ぴったんこか?」。子供たちは「あっ、ずれている」と発声。私は心の中で「上手くいった」と叫んでいるのです。☆

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 ここは「ちばサイ」向きと思われるサイエンスっぽいネタを、会員が問題提起エッセイとして自由投稿するコーナーです。「今日はこんな発見をした」「こんな工夫をした」「こんな本を読んだ」「こんな人にあった」などなど。自己体験と、そこから生じたふとした問題意識をベースに、投稿者の目線で語っていただくものです。「サイ新ニュース」より、間口が広いので、気楽にどしどしご投稿ください。

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5●トリケラトプス●

特集記事のコーナー

 
■ 台風につけられた星座の名前
 

(文責・田中博春/「ちばサイ」編集担当)

 

 今年1月12日に台風1号が発生しました。フィリピン東方海上に発生したこの台風の国際的な呼び名は「ターファー」。マレーシア語の淡水魚の名前がつけられています。日本でも戦後間もないころは、「カスリーン台風」などのように女性名が付けられていた時期もありました。現在のような台風何号という名前になったのは、1953年(昭和28年)からのことです。日本やインドのように台風を号数で呼んでいる国や地域はむしろ少数派で、国際的には欧米などのように台風に何らかの名前を付けるところのほうが多いのです。

 日本の属する北太平洋地域でも、国際的に発表する台風情報には「アン」・「バート」・「イブ」などの、台風の呼び名が併記されていました(アメリカ海・空軍の合同台風警報センター(JTWC)が命名)。しかし、2000年1月からは、国連アジア太平洋経済委員会/世界気象機関(ESCAP/WMO)の台風委員会で決められた台風の呼び名(アジア名)がつけられることになりました。ちなみにこの命名は、西部北太平洋領域の地域特別気象センターの役割も担なっている、日本の気象庁が行っています。

 今回気象庁から発表があったのは、この台風のアジア名がいくつか変更になる、ということです。今回の変更では、アメリカからの申し入れにより雲を意味する「クードー」が、嵐をさす「アイレー」に変更になったり、またタイからの申し入れにより、雷の天使「メグーラ」が「メーカラー」に、また雷神「ラマスーン」のアルファベットの綴りが変更になったりしました。

・気象庁 > 報道発表資料
http://www.kishou.go.jp/
>台風の呼び名リストの一部変更について
http://www.kishou.go.jp/press/0112/14d/taifumei.pdf

(pdf形式、Adobe Acrobat Reader が必要)
http://www.adobe.co.jp/products/acrobat/

 面白いのは、この資料の2枚目についている台風の呼び名の一覧表です。台風の呼び名はアジア域の14の国と地域からそれぞれ10個づつ提出され、計140個の名前が順繰りについてゆきます。その名前は、人名や花・木・鳥・魚などの名前が多くつけられているのですが、雨の神の名前(タイ)、人知れず咲く美しい花(北朝鮮)、伝説の少女の名前(カンボジア)、孫悟空(中国)などなど、よく見ると結構味わいのある名前がついていたりします。また、有名な戦士の名前・伝統の酋長称号・有名な遺跡の名前などを並べたミクロネシアや、プリン・すもも・マカオ料理の名前などが並ぶマカオなど、命名にはそれぞれの地域性も出ていて、どういう経緯でこの名前が選ばれたのか、思わず想像をめぐらせてしまいます。

 それでは、日本はどのような名前を付けたのでしょうか? 下にその一覧を抜き出してみました。

■ 日本が命名した台風の名前

呼び名 カタカナ名 意味
Tembin テンビン てんびん座
Yagi ヤギ やぎ座
Usagi ウサギ うさぎ座
Kajiki カジキ かじき座
Kammuri カンムリ かんむり座
Kujira クジラ くじら座
Koppu コップ コップ座
Kompasu コンパス コンパス座
Tokage トカゲ とかげ座
Washi ワシ わし座

 

 というように、日本から選ばれたものは、なんとすべて星座の名前なのです。いや、びっくりですね。しかも、てんびん座・やぎ座ときて黄道12星座なのかと思いきや、かじき座・コップ座・コンパス座・とかげ座などのマイナー星座も選ばれています。かんむり座・うさぎ座・くじら座などもマイナー星座に入ってしまうかもしれません(準マイナー星座?)。
 何年か後には、台風「クジラ」や台風「ワシ」が日本に襲来、ということがあるかもしれません。それならば、いかにもといったところがあるかも(?)しれませんが、台風「ウサギ」や「コンパス」に襲われてしまうのは、なんだかなあ・・・という気がしてしまうのですが、みなさんいかがでしょう?

 そもそも、なぜこのようなアジア名がつけられることになったかというと、アジア名には、

  1. 国際社会への情報に台風委員会が決めた名前を採用してもらうことで、アジアの地域文化を尊重し、委員会諸国間の連帯の強化と地域間の相互理解を推進すること
  2. アジアになじみのある呼び名をつけることによって、防災意識を高めること(1997年の第30回台風委員会で提案され、採用が決まる)

という目的があります。2番目に理由は、なじみのある名前が防災意識を高めるのに役立っているというフィリピンの経験に基づいたものだそうです。

 ですがやっぱり、「コップ」や「コンパス」は、これらの理由にあまり当てはまらないような気もするのですが・・・。なんで台風に星座の名前を付けることになったのか、誰がどういう理由でこれらの星座を選んだのか、ちばサイくん編集部のほうでぜひ気象庁に取材したいものです。
 今年の台風12号の名前は「Kammuri(カンムリ)」。ちょうど台風シーズンのちょっと前にやってきそうです。そのころに、取材しましょう。ね、高田さん。

 ちなみに、台風を含む熱帯低気圧は、各地域により名称が違います。東太平洋・大西洋(メキシコ湾・カリブ海を含む)ではハリケーン、西太平洋ではタイフーン、オーストラリア近海ではウイリ・ウイリ、インド洋ではサイクロンと呼ばれています。それぞれの地域での台風の呼び名は、以下のページにまとめられているので、ご参考ください。

・お天気コアラのちょ〜M&M
http://www.asahi-net.or.jp/~ns8m-hgc/
> 世界の台風名
http://www.asahi-net.or.jp/~ns8m-hgc/typhoon-world.htm

ということで、それではまた。

 

国際的には上に書きました台風名が使われますが、国内向けには従来通り台風は号数表記で表されます。また、気象庁では、たとえば2000年の台風26号を「0026」と表記しています。

※※ その後の調査で、日本が星座名を採用した理由がわかりました。それは、名前の流通に伴う利害や気象情報の誤解が生じないようにするため、なるべく「中立的な」名称を選ぶように配慮され、すべて星座名が選ばれたそうです。星座は「自然」の事物であって比較的利害関係が生じにくいことと、大気現象である台風とイメージ上関連がある天空にあって、かつ、人々に親しまれていることが主な提案の理由だそうです。

 でも、とかげ座やコップ座が選ばれたのも、この中立的な理由からなのでしょうか? やっぱり、この選ばれた星座名の謎は、気になるところです。☆

 

<参考>

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 特集的な位置付けのコーナーです。読みきりの本格的ウンチク系の記事のほかに、何か科学的に大きな現象の観測・観望情報とか、あるいは会の行事の報告とか、比較的ボリュームのある内容の記事を載せていこうと思います。

 

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