◇発会式紹介
●「ちばサイエンスの会」発会式記念講演

「ちばサイエンスの会」は2001年7月7日に誕生しました。
会長は、文部科学省宇宙科学研究所の的川泰宣教授です。
ここでは、当日行なわれた会長の記念講演のようすを音声と文章抄録で
ご紹介します。

                           (2001年7月7日・千葉市文化センター)

 的川泰宣会長「ちばサイエンスの会」発会記念講演 (抄録)

 私が最近、強く意識しているテーマに「命」の問題があります。私は広島の呉の
生まれで、呉の大空襲や広島の戦災のようすを肌で感じながら育ってきたもの
ですから、生と死についてはずっと関心を持ってきましたが、最近の事件や
世相を見ると、この命がずいぶんと軽んじられてきているような気がします。

 戦後、日本はさまざまな分野で世界に通用する仕事を成し遂げようと努力して
きました。その点では、目標がはっきりしていましたから、大人はもちろん、
背中を見て育つ子どもたちにもその気迫は伝わっていたように思います。
私は、たまたま宇宙の仕事を続けてきましたが、この分野も、まったくの
ゼロから築き上げた半世紀で、とにかく「宇宙が好きで好きでたまらない」
といった人たちが、懸命に仕事を続けてきた、といった感じです。

 ところが、日本全体がある程度の成果を上げてここに至ってみると、目標を
見失った人たちの心の中に、どこか荒んだ空気が広がりはじめている。
とくにそれが「命」の軽視に繋がり、次代を担う子どもたちに悪影響を及ぼす
ことが心配です。

 その意味で、私たちの社会は今、新しい目標を模索し始めているわけですが、
これを探し出すための力のひとつが「科学」だと思うのです。
それも従来の専門化したサイエンスではなく、社会に生きる一人一人の
目線に立ったサイエンスの思想、といったものが求められているのだと思います。

 たとえば、自分の命がどこから来たのか? 命ってなんで大切なのか?
と真正面から問われたときに、日常生活とはまったく縁遠いと思われる現代
宇宙論の知見が、じつはたいへん重要な示唆を与えてくれます。
表面的な科学の成果だけではなく、その知識や方法、考え方が人生や社会で
生きていくための真の力なる――そういった“科学の心”をいかに育み、いかに
広めていけばよいのかを、「ちばサイエンスの会」のみなさんとともに考え、
活動していきたいと思っています。

ちばサイエンスの会発足会 的川会長記念講演 音声ファイル
MP3形式 39分08秒間 17.92MB ()

的川 泰宣(まとかわやすのり)
文部科学省宇宙科学研究所教授
(対外協力室・内之浦宇宙空間観測所長)

専門研究(ロケット軌道工学)、対外協力(各国の宇宙機関と日本の宇宙探査・
開発計画の調整や取りまとめ)、広報普及の多方面に活躍、宙教育にも関心が深い。
とくに、宇宙科学研究所を挙げて取り組んでいる小中学生向けの「宇宙学校」の
中心メンバーとして、子どもたちへの宇宙教育の実践と理論化にも力を注いでいる。


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講演冒頭の25秒間は音声レベルが低くなっています。