○特別見学会 ハワイ島ヒロ市の国立天文台
「ハワイ観測所」とマウナケア山頂の「すばる望遠鏡」(報告)

                           ちばサイ 上野友久



8月2日〜8日、ちばサイ初の海外施設見学会となった
ハワイ島ヒロ市にある国立天文台「ハワイ観測所」と
マウナケア山頂の「すばる望遠鏡」に行ってきましたので
会員の皆様に報告します。

日時:2004年8月2日〜8月8日(見学会以外の日程も含む)

見学場所:国立天文台ハワイ観測所及びすばる望遠鏡

参加者:
笹生、加藤、藤村、多賀、上野、増田(以上、ちばサイ会員)
藤村さんのご子息の7名。見学会には参加しなかったが今回の
ツアーには多賀さんのご家族も参加。ツアー参加者総数10名

8月2日18時30分成田空港発日本航空080便で一路、
ホノルルへ。日付変更線を通過し、現地時間8月2日6時45分
ホノルル空港に到着。ホノルル空港から国内線に乗り換え同日
9時34分ハワイ島ヒロ空港に到着。

ハワイ島までにフライトは幸いにも天候に恵まれ、飛行機の窓
からすばる望遠鏡があるマウナケア山を見ることができました。
ヒロ空港に近づくときにマウナケア山の方に目を向けると山頂に
天文台のドームが光り輝いて見えてました。
宿泊のホテル(ハワイ・ナニロア・リゾート)にチェックイン、各自
昼食を取り、午後からキラウエア火山へのツアーに。

キラウエア火山に近づく頃には空模様は一転。ツアーバスに乗っ
ている間は激しいスコールに何度も襲われる天候でしたが、なぜか
火山観測所付近でのキラウエア・カルデラの展望、火山の溶岩が
海に流れ落ちる様子を見るポイントまでのトレッキングの間は
スコールに見舞われることはありませんでした。
溶岩が海に流れ落ちる様子を間近に見ると「地球が生きている」
ということがよく分かります。
溶岩が海に流れ落ちる様子

ボルケーノ・ハウス(ホテル)で夕食を取り、ヒロのホテルについた
のは21時でした。

翌日(8月3日)はハワイ島に近づいたサイクロンの影響で朝から
雨模様。朝9時、多賀さんの家族以外の7名はチャーターした4WD
のバスに乗り、ハワイ大学ヒロ校の敷地内にある国立天文台
ハワイ観測所に向かいました。
ハワイ大学ヒロ校の敷地内にある国立天文台ハワイ観測所

観測所では林 左絵子先生の案内で一般には公開していない
研究室等を案内していただきました。製作室ではちょうど東北
大学の大学院生が新しい観測装置を製作していたので、その
装置について学生さん(女性でした。)からいろいろな話を聞く
ことが出来ました。
別の製作室では主鏡の再メッキに使用するフィラメント(実物)等
すばる望遠鏡に直接関係あるものを目にすることができ、これから
向かうすばる望遠鏡への関心がますます高まりました。
主鏡の再メッキに使用するフィラメント
主鏡の再メッキに使用するフィラメント

ハワイ観測所の隣には、マウナケア山頂にある天文台の山麓施設
が立ち並んでます。そのそばではマウナケア天文教育センター
(天文ガイド2004年9月号参照)の建設が始まっていました。
2005年の暮れにはオープンの予定とのこと。中にはプラネタリウム
が入るとのことです。この施設が完成することにまた同じような
ツアー企画したいですね。
(マウナケア天文教育センターのHP 
http://maunakea.hawaii.edu/menu.html )

ハワイ観測所をあとにして、一路マウナケア山頂を目指しました。
ヒロから車でおよそ1時間でマウナケア山の中腹(2800m)にある
ビジター・センター(オニヅカ・ビジター・センター)で高所順応と昼食
のために1時間休憩。
ビジター・センター(オニヅカ・ビジター・センター)
ビジター・センター


未舗装及びガードレールのない道

ここから4WDでも1速か2速でしか走行できない急勾配、
未舗装及びガードレールのない道を1時間近く走ると、
目の前にマウナケア山頂の天文台ドーム群が見えてきました。

まず見えたのが、「ハワイ大学の0.6m望遠鏡」。
そのあとは道なりに「イギリス赤外望遠鏡」、「ハワイ大学2.2m
望遠鏡」、「ジェミニ望遠鏡」等とテレビでしか見たことない風景が
目の前に見えてきました。「ハワイ大学2.2m望遠鏡」の前で車を
止めて外に出てみると向こう側に「すばる望遠鏡」と「ケック望遠
鏡1号機&2号機」が見えてきました。
マウナケア山頂にある天文台
左から、すばる ケックTとケックU

山頂の気温は6度。ヒロの町での気温は30度だったので、
寒さが身に応えたので、すばる望遠鏡の前でツアー会社が
用意してくれたジャケットを着てしまいました。

いよいよ「すばる望遠鏡」です。

「すばる望遠鏡」の観測棟前で専属ガイドの長谷川久美子さん
と合流し、まず事務室に案内され、簡単に見学ルートの説明を
受けたました。
次に観測棟内のコントロール室(オペレーション・ルーム)に
行きました。
観測棟内のコントロール室
観測棟内のコントロール室

そこはパソコンのディスプレーの数に負けないくらい天井の
ケーブルラックには研究者たちが作ったテルテル坊主が
ぶら下がってました。皆、愛嬌のある顔をしてました。
テルテル坊主
テルテル坊主

望遠鏡への通路で防護用のヘルメットをかぶり資材を載せる
ことができる巨大エレベーターに乗り望遠鏡が入っているドーム
に向かいました。

まず、最初に入ったのはドーム3階。そこでまず目にしたのは、
8.2mの主鏡が収められている強大な主鏡セルとカセグレン焦点。
そして副鏡は首が痛くなるほど顔を上げなければ見れない高さ
にありました。改めてその青くメタリックに塗装されたすばる望遠鏡
の大きさに驚かされました。こんなに大きいものとは・・・・、
これが実際に見た最初の感想です。
主鏡セルとカセグレン焦点
主鏡セルとカセグレン焦点

ドーム内は夜になってすぐに観測が出来るようにエアコンで
常に外気と同じ温度に保たれていました。ドームのスリットに
目を向けると穴の開いたプレートが目につきました。
これはドームを開けたときに吹き込んで来る風を整流するものです。

穴の開いたプレート

壁面の格納庫にはカセグレン焦点に取り付ける何種類もの
観測が収められてました。また、NHKの天体撮影用のハイ
ビジョンカメラ(というよりも装置)もありました。
※ここまでは一般公開では見ることはできません。
次に望遠鏡全体を見渡せる高さのところまでエレベーターに
乗って行きました。


そこから見るすばる望遠鏡は下から見たイメージとは違い
軽量化を図ったシンプルな姿でした。
すばる望遠鏡の全容

エレベーターに乗り、今度は望遠鏡架台を動かす動輪のある
フロアー(ドーム2階)に行きました。天井までの高さは2mほど
の空間ですが、そこには望遠鏡架台を正確に目標の天体に向け
るための(水平)駆動装置がありました。よく見ると動輪が通る
レールはなめらかな動きが出来るようレールのつなぎ目は斜めに
カットされてました。レールの下にバーコードが描かれてました。
望遠鏡を正確にかつ滑らかに目標の天体を向けるための技術と
工夫を見ることができました。
(水平)駆動装置
(水平)駆動装置
※ここは一般公開では見ることは出来ません。

次に階段でドーム1階にある主鏡のメンテナンス・エリアに降り
ました。階段から見るこのフロアーは天体観測施設と言うより
メンテナンス工場という感じです。ここには主鏡をつり上げる
ハンドリング装置、運搬用台車、大型鏡面洗浄装置があります。
でも、何と言っても一番目をひいたのは主鏡再メッキ用の大型
真空蒸着装置です。
大型真空蒸着装置
大型真空蒸着装置

主鏡の再メッキはおよそ3年ごとに行われているとのことです。
その際使用するアルミ蒸着用のフィラメントの数は288本。
そのフィラメントは午前中に訪ねたヒロ市のハワイ観測所で
再メッキの1年以上前から作り始めるだそうです。

※一般公開ではハンドリング装置、運搬用台車、大型鏡面洗浄
装置及び大型真空蒸着装置を見ることはできません。
1階の踊り場でパネルによる説明だけです。



最後にすばる望遠鏡の血管ともいえるケーブルの収納場所に
行きました。
ケーブルの収納場所
ケーブルの収納場所

ここはすばる望遠鏡の生命線(人間で言えば血管)である
各種ケーブルが架台の移動、鏡筒の傾斜で絡まないように
望遠鏡の移動するたびにケーブルをつり下げているラック
全体が動くようになってました。そこにいたエンジニアの方に
最長のケーブルの長さを聞いたところ一言「分からない(英語で)」
とあっさりと答えが返ってきました。
※ここは一般公開では見ることができません。

ガイドの長谷川さんの熱心な説明を聞き、その都度こちらも
いろいろ質問しながらの見学だったので当初の予定滞在時間
(1時間)を30分以上オーバーしてしまいました。それでも半分
維意地ですばるの隣にある「ケック望遠鏡」も見てきました。
ここはビジターセンターがあり、ガラス越しですが主鏡を見ること
ができます。
ケック望遠鏡
ケック望遠鏡

幸い誰一人高山病にかかることなく、一気に標高4200mから
標高0mのところまで降りていきました。(1時間で)

この日の夜は林先生の自宅でバーベキュー・パーティということに
なっていたので、ホテルに向かう途中ショッピングセンターにより
諸々の買い出しをして、林先生宅に向かいました。
(ハワイ島では1区画の土地が大きいのでほとんどが平屋です。)

林先生宅でのバーベキュー・パーティには唐牛ハワイ観測所長、
内藤事務長も参加して、すばる望遠鏡建設までの裏話、ハワイ
観測所の運営の苦労話等を聞くことが出来ました。
高性能な望遠鏡による華やかな成果の裏には地道な作業と苦労
があることがよく分かりました。
林先生宅でのバーベキュー・パーティ
林先生宅でのバーベキュー・パーティ

夢にまで見た「すばる望遠鏡」を見ることができたこと(それも
ディープに)、最後に観測所スタッフからいろいろ話を聞くことが
出来たので、特別見学会は大成功です。

ハワイ島最終日の翌日(8月4日)は昨日までの天気とはうって
かわっての晴天。(昨日の天気がこうだったら・・・・と、悔やまれ
ます。)ホテルの中庭からはヒロ湾の向こうに頂上に天文台ドーム
を輝かせたマウナケア山を見ることができました。絶景、絶景!
マウナケア山とドーム群 絶景、絶景!




このあとは帰国まで観光モード。ホノルルではおのおの楽しん
だようです。今回のツアーの全容については現在製作中の旅行記
(CD−RとDVD)で・・・・。すばる望遠鏡につてもこのHPでは書き
きれなかった記事、画像そして動画もあるので今しばらくお待ち下さい。

最後に我々の無理なお願いを聞き届け、すばる望遠鏡のスミから
スミまで見学させてくれましたハワイ観測所所長、林先生そして
観測所のスタッフの方々、そして見学の口添えをしていただいた
家先生に心よりお礼を申し上げます。
ほんとうにありがとうございました。

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