WEB ちばサイくん

■第28回、日本科学教育学会(千葉大)

ちばサイエンスの会


■第28回、日本科学教育学会(千葉大)にて
科学教育実践セミナーの研究発表

千葉市立郷土博物館”星を見る会キャラバン事業 ”と
ちばサイエンスの会

発表者:喜多伸介

以下の内容のパワーポイント、ダイジェスト版:3.71MB
(内容を半分以下に画像等も80%ほど抜いたもの)

これから、
千葉市立郷土博物館の事業である”星を見る会キャラバン ”
にNPO法人「ちばサイエンスの会」のスタッフが参加する
ことによって星の美しさ、感動を子供に伝えていく、その活動
と意義について紹介します。

1.はじめに、千葉市立郷土博物館について簡単にご紹介
します。

千葉市立郷土博物館の外観はお城です。主として千葉市の
歴史・民俗系の博物館です。実はこの中にプラネタリウムが
あって天文知識に関する普及も行っています。
機械まかせのプラネタリウムが多い中でここのプラネタリウム
は解説員による生解説です。このプラネタリウムの事業の一環
として毎月1回、お城の前で行われている星の観望会があり
ます。ところが、平成8年、博物館の工事で敷地が利用でき
なくなり、そこでその期間に学校の校庭を借りて「星を見る会」
を実施したところ、非常に好評でそれをきっかけとして、
各学校を回って星を見せる活動、”星を見る会キャラバン ”
が始まったということです。

千葉市には119校もの市立小学校と56の市立中学校が
ありますが、そのうち、申し込みがあった学校で星を見る会
を行います。年々、実施する学校が増え、今年度(平成16年度)
は72校もの申し込みがありました。これにお城の星を見る会、
12回を合わせると相当な日数になります。

星を見る会の申し込みの殆どが小学校です。
割合から見ると全小学校の6割が星を見る会に申し込んで
います。特に最近は急激に申し込みが増えてきたこともあり、
学校同士で希望する日程が重なる事もあり、日程の調整が
利かず、断念しているところもあると聞きます。

博物館が学校からの依頼で職員を派遣し、観望会を行っ
たりするケースはよくありますが、千葉市で行われている
「星を見る会キャラバン」の事業は数においても、内容に
おいても他に勝るものはなく、博物館担当者の熱意や
努力とともに学校の理解と協力なくしてはなかなか実現し
ません。特に星を見る会で使う望遠鏡などの機材は次に
行われる学校の先生方で運んでいただくということになって
います。機材も大きくかさばり、数も多いので普通乗用車
では積みきれません。博物館の一方的な開催ではなくて、
学校も共に協力関係にあるということは素晴らしいことだ
と思います。
ちばサイエンスの会がこの事業に参加し、未来を担う
子ども達と触れ合うことができるのはとても有意義な
ことであります。

2.実際の活動
(1) 星を見る会キャラバン

この星を見る会キャラバンのスタッフは博物館職員と
その活動を支える我々、ちばサイメンバー数人から構成
されています。
前年までのレギュラーメンバーは5人ほどでしたが、最近、
ちばサイ内で募集を行ったところさらに数人増え、今年は
大学生の参加もあり、多彩なメンバーが揃い始めたところです。
このメンバーでローテーションを組んで負担を軽減しています。

しかし、この会は、星を見る会ですから、いわゆるお天気
まかせの活動です。いくら頑張ってもお天気にはかない
ません。学校にとっては年に1度のチャンスなので天気が
悪いと1年またないといけません。
まるで七夕のおりひめとひこぼしのような関係です。
当日、実施の有無は、午後のある時点で、天気予報を
見ながら学校が判断します。博物館に連絡がいくと、
博物館から当日の担当のちばサイメンバー、通称、キャラ
バンスタッフに連絡がいきます。天候による実施率は
大体6割です。

1回に行うスタッフの人数は、郷土博物館の職員が1名、
他にキャラバンスタッフが2〜3名、合計4人ぐらいの
スタッフで行われていますが、子どもの参加人数は学校
によって異なります。
4年生だけ、あるいは4年生以上で参加させている学校も
ありますし、中には1〜6年生まで学校をあげて全員が
参加しているところもあります。子ども達だけではなく、
先生はもちろん、子どもの親も参加している場合もあり
ますので、さらに人数は多くなります。人数は多いところ
で300人以上になる学校もあります。
その場合はスタッフと機材の増援を行います。
スタッフは社会人が殆どなので、当日は仕事を休むか、
会社を早退して観望会に参加する場合もあります。
使用する機材は天体望遠鏡が2台、大型双眼鏡が1台、
小型双眼鏡36台。これを学校の先生が前に行われた
学校に取りに行くという方法なので、スタッフは身一つ
で参加が可能ですが、自前の機材や講習の資料を持ち
込んだりすることもあって気軽でもありません。
スタッフは学校に到着次第、校庭や屋上などの観望に
適した場所に機材を設置します。校庭と言っても学校に
よって様々なので場所によって地面の状態が悪かったり、
星が建物に隠れて見えなかったりしますので、わりと慎重
に行っています。この機材の設置に要する時間は30分程度。
この時間を利用して、希望している学校には体育館や教室を
使って、講習会を行っています。
この講習会はちばサイエンスの会メンバーであるスタッフ
の提案によって本格的に始められました。
観望会の前の予備知識を持ってもらう為に講習を行うこと
によって、効率よく星の観察や学習が行えるとともに子ども
達とスタッフとのコミュニケーションが図られています。
この講習を受けるか受けないかの希望は学校にお任せして
います。現在、講習を希望している学校も半数以上と増え、
講習内容ともに好評をいただいております。


担当するスタッフによって異なりますが、当日見える星座案内、
観察の仕方、宇宙の神秘に触れる等々。講習の内容も方法も
様々で望遠鏡やスライド、OHP,プリント、ビデオ、地球儀、
さらにパソコンのプレゼンテーションソフト、天文ソフトを
使った方法などあらゆる方法が今までに試されています。
現在は学校の機材設備が整ってきたおかげでパソコンの
プレゼンテーションソフトを使って講習を行うケースが多く
なってきました。
このパソコンのプレゼンテーションソフトを使いますと、
視覚的に飽きさせないばかりか、解りやすく、楽しいと
いう利点があります。画像も豊富に取り入れることが
できますし、また一校一校のオリジナルのソフトを作る事
も可能です。
自分の学校の名前が出てきたり、自分達の学校の写真が
出てくると、もう大喜びしてくれます。
さらに、スタッフ間でデーターの共有化を図ることよって
質の高い講習を行えることが可能になります。

いよいよ屋外に出て、実際の星を見る段階になると慌しく
なってきますので、怪我などを防止する意味も含め、予め
望遠鏡を覗くときの注意などを話しておきます。
まずは観望途中自分で星の観察ができるように小型双眼鏡
を配り、使い方のレクチャーを行います。その際に簡単な
星座案内も行って、見所を紹介するようにしています。
人数が多い場合は、双眼鏡で観察するクラスと望遠鏡で
観察するクラスに分けて、時間で交代しながら行っています。
各望遠鏡にはスタッフがつき、望遠鏡操作と案内を行って
います。観望対象もそれぞれの望遠鏡の特性にあわせ、
その時間帯に見える天体を事前に割り当てて行っていますが、
天候などの条件によっては別の天体に切り替えるなど柔軟に
対応しています。もちろん、これはスタッフが空のどこに
対象の天体があるか熟知していないとできないことです。
観望対象は時間が限られているので沢山見せることが
できません。
主に月や惑星などの明るい天体をはじめ、星の色の違いを
知る2重星、沢山の星の集まり、星団などを見ます。
望遠鏡には長蛇の列ができ、観望会途中スタッフはずっと
望遠鏡に付きっきりで一人一人に声をかけながら星を見せ
ています。

(2) 星を見る会で得られるもの
約1時間ほどの観望会で終了となりますので、ちょっと
物足りなさを感じますが、それは子ども達も同じ事でしょう。
もっと星を見たいという気持ちが、星を見上げる機会を増や
すことにつながればいいなと思います。
星を見る会が終わると後片付けもバタバタとほんとに息の
つく時間もなく片づけが終わる頃はクタクタになってしま
いますが、
子ども達を始め参加している人たちが喜んで帰って行く姿を
見ると疲れが飛んで行ってしまいます。

星を見る会が如何に子ども達に喜ばれ、また、感動して
もらえたかは、子ども達が書いて送ってきた沢山のお礼状
や感想文などから知ることができます。
一部をご紹介しましょう。

★私は夏の大三角を一度も見たことがありませんでした。
けれども星を見る会で初めて見て、△なんだなぁ。
と思いました。家に帰るまで夏の大三角を見ながら
帰りました。

★こんなにもたくさんの星を見たのははじめてです。

★月がデコボコしていたのでびっくりした。

★私はおとめ座なので、今度自分の星座を見たいです。

★理科の勉強よりもずっと楽しかったです。

★私は星を見る会で星を見るのが好きになりました。
今まで星には興味がなかったけど興味が出てきました。

★私はとても星が好きで、ずっと前から星を見る会を
楽しみにしていました。

★僕は星を見る会に参加して、すごく感動して夜も
眠れませんでした。

★人間はここまで星、・・・遠いものを見れるように
なっただなんてスゴイことだナ。
明日からは1日に1度は空を見上げよう!

★一番すごいと思ったのは、私達の住んでいる町から、
こんなにたくさんの星がみえたということです。

★人工衛星がものすごいスピードで飛んでいる
のもわかりました。
あれはすぐに地球を一周してしまうと思います。

★私はキャラバン隊の星を見るすばらしさに
あっとうされました。
私もその気持ちをもちたいです。私もいつか、
すい星などを見つけ、名前をつけたいです。

★星のことについていろいろおしえてくれて
ありがとうございました。こんどは、これを
いかして勉強をがんばります。
星を見る会に行ってよかったとお母さんも
言ってました。


星を見る会では、親も一緒に参加している事も多く、
連絡帳などに翌日、感想を書いてくるそうです。
これは私たちスタッフはまず、見る機会はあり
ませんが、学校の先生がその事を知らせてくだ
さいました。

★迎えに行ったわずかな時間でしたが夜空をゆっくり
見上げる事もあまりないこの頃でしたので
とても心が洗われる気持ちでした。

★とっても感激しました。こういう会がなかったら
私たち世代はじっくりと星を見ることもなかったと
思うので また開いて欲しいと思います。

★望遠鏡で星を見るのは初めてでしたので感動しました。

★子ども達と一緒になって楽しく星を見ました。

という風に
この、星を見る会で初めて星を望遠鏡で見ることが
できたという親もいて、ひじょうに喜ばれています。
星を見る会は親子の共通の話題を提供する事にも
貢献しているようです。

先生方からの感想もいただいております。
★美しい月面の様子、実際の星座を見つめてのお話、
目の前にある星座の大きさ・・・どの瞬間をとっても
本物に出会う素晴らしさを子供達共々感じることが
できました。

★ぜひ、来年以降も継続して子ども達のために活動
されることを強く望んでおります。

このように星を見る会で実際の星の光に触れる事によって、
星の美しさに気づく人が増えています。。
星を見ることによって自分達の住む世界を広い視点に
立って見ることができるようになります。
中には広い宇宙を想い、夢を育んだり。時折、頭上を
通過する宇宙ステーションや人工衛星を見ながら、
将来、宇宙で活躍したいと想う子もいたりするのです。

広い視野を持つこと、それによって地球環境に関心を
もつことも期待ができます。
キャラバンスタッフの悩みとして・・・もっと沢山の星を
見せたいのに夜空が明るいために星がロクに見えません。
実際、講習の際に子ども達に訊ねますと、天の川を見た
ことがあるという子どもは1割に満たないくらいです。
小学校では理科の学習では星の観察が敬遠されがちで、
それは星がよく見えないから というのが理由にあるそうです。
なぜ、星が見えないのか? これは講習などでも話している
事なのですが、それは 街の明りが多いからですね。
これはちゃんと子供でもわかっていることです。
なぜ星がよく見えないのか、天の川が見えないのはなぜなのか、
そうした事を考えてもらうことによって省エネルギーなど、
環境問題への気付きになり、環境改善への足がかりになれば
いいなと期待しています。


3.考察と今後の課題

私たち ちばサイが、今後のどのように星を見る会に
携わったらよいのか、課題として

(1)天文学習内容の把握
(2)天文知識と望遠鏡操作技術の習得
(3)人材の確保と育成
の3点をあげてみました。

(1) 天文学習内容の把握
小学校4年生の天文学習の補完を目的とする学校
が多いので、今、学校ではどんな学習をしているのか、
事前学習なのか事後学習なのか、子供たちはどんなこと
に興味があるのかなどを把握することにより、適切で
効果的な解説をすることができる。
ちばサイエンスの会には教員の方も多いので、学校での
情報をいただきながら、我々スタッフも教育に関わる者
としての自覚を深めていきたいと考えています。

(2)天文知識と望遠鏡操作技術の習得
望遠鏡操作が得意なスタッフ、星の解説が得意な
スタッフなど、それぞれ持ち味がありますが、やはり
子供たちに話しかける場面も多く、正確な天文知識と
望遠鏡操作技術は不可欠です。
お互いに切磋琢磨し、一定レベルの知識、技術を身に
つけていきたいと考えています。


(3)人材の確保と育成
さらに多くの学校で行われるようになる為に、より一層
の人材の確保と人材の育成が必要と考えています。
学校での学習との整合性と共に、より発展的な展開を期待
する為にも特に人材の育成は重要であり、質の高い内容を
目指したいと考えています。


千葉市立郷土博物館の事業である”星を見る会キャラバン ”
に、スタッフとして参加し、望遠鏡を覗き、歓声をあげたり
目を輝かせたりする子ども達とふれあうことでキャラバン
スタッフは、自らの喜びを見いだしています。
現代の科学は星の美しさに隠されたメッセージを解読して
くれています。
それは私達が宇宙のどこにいて、私達は一体何者で、
どこから来て、どこへ行こうとしているのか・・・私達が
持っている疑問の多くは星空の中に隠されています。

最後に子供の感想の中からひとつ紹介します。

星を見る会に参加して
星を見る会はたぶん一生心にのこると思う。
いつもこんなにきれいな星が私たちの頭上を
ういていたなんてしんじられなかった。
こんなきれいな星を見せてくれた人に感しゃしたい。

ちばサイエンスの会では、学校では学ぶ事が難しい事を
このキャラバンの活動を通じ、断片的でもこの事を伝え、
子どもの健全育成を図る活動に貢献できればと考えています。

以上、ご清聴ありがとうございました。

上記内容のパワーポイント、ダイジェスト版
(内容を半分以下に画像等も80%ほど抜いたもの)、

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